羊と米の海

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今更CD感想 須田景凪「porte」

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 溶け込む音。

 

 
 こんにちは、フラットです。

 先日発売されたぴあmusicの須田景凪&神山羊の写真がバリカッコ良くてウキウキウォッチングな寝正月です。やはり曲の良し悪しが最重要と言えど、どうせ写真出すならカッコ良く撮られてるのが良いよなーと再確認。

 ただ、羊兄貴の履いてるパンツの膝部分、あれどうなってんだ。スタジオ行く途中ですっ転んで破れたんか。あと景凪兄貴、あなたはバッチリ顔見せると上からタライ降ってくるとか何かそういう縛りでも強いられてるんか。謎の光や草で上手い事隠してるとこに決して揺るがぬ鋼鉄の意志を感じる。

 

 そんなこんなで須田景凪の2ndEP「porte」の感想を(今更ながら)書いていきます。 

 相変わらず音楽知識階級的な見解は一切持ち合わせておりませんので、ノリと勢いとフィーリングだけで好き勝手に語り倒します。

 あと個人的にかなり衝撃的な作品だったので一曲ごとの文字数リソースやたら多いです。ご了承ください。

 

 それではよろしくどうぞー!

 

 

 

1.「veil

 テレビアニメ「炎炎ノ消防隊」のエンディングテーマとして書き下ろされた一曲。

 一筋縄ではいかないユニークなギターリフ、軽快なドラムビート、抒情的な歌詞、パワフルでいてどこか愁いを帯びた歌声などなど須田色全開の歌モノJ-ROCK。一発目だからって手加減する事なくゴリゴリオラオラ押していくこの漢気、早くも名盤の気配を感じます。

 

 須田曲は全体的に主人公の独白めいた歌詞が多いのですが、「veil」はアニメタイアップとあってかより独白感が強い印象。

 幼い時のトラウマを抱えて生きる作中キャラクターの歌との事で、そのせいかいつもより主人公の内面にフォーカスしたリリックです。皮肉・諦め・不安・ほんの少しの希望が綯い交ぜにされた、非常に濃密で哀愁漂う歌詞世界が展開されています。

あなたの言う未来は ただ、この手に収まらなくて

どんなに繕ったって その笑みの奥を疑ってしまうだろう

 思わずどきりとしてしまう鋭い表現が多いのも特徴的。

 

 タイアップの何が難しいかと言ったら、タイアップ先の世界観を尊重しつついかに自分の個性を出していくかに尽きると思います。

 尊重し過ぎるとチープになるわ無個性になるわで散々だし、かと言って自分色を出し過ぎてもチグハグなモノになってしまう。世界観と自分色の配分がメチャクチャ難しいと思うんです。

 それを鑑みると「veil」はベストバランスなんじゃないかと。サウンド面は須田感強め、しかし歌詞の方は自分色出しつつキチンと物語にリンクしている。タイアップ曲として理想的な形、黄金比率。須田さんは好きな作品を自己解釈して曲に落とし込む事をたまにしていたそうですが、それも納得の一曲です。しかし今風少年漫画タッチの作画&ストーリーと抒情的な詞の食い合わせが何か悪いようにも感じるんだな。

 

 タイアップなのに個性的とかすげえわ~やっぱ兄貴やば~~と感服し、暫くリピート。

 しかし、何回か聴いてふと違和感を覚えた。

 

 あれ、手拍子ない? 銅鐸みたいなバァーン音ない??

 

 そう。須田景凪(バルーン)楽曲の数ある特徴の一つと言えば、乾いた手拍子とグルーヴ感を掻き立てるバァーン音。どちらもバルーン時代の大ヒット曲「シャルル」で確立され、須田景凪名義になってからもちょくちょく使っていた音です。

www.youtube.com

 Aメロや間奏で鳴り響くパンパパンパン、0:37秒辺りのバァーン。須田景凪よくばりセットな一曲。

 

 バラードならいざ知らず、「veil」は結構激しめの曲だし、Quote&teeterの頃の須田さんならば確実にどっかで手拍子入れてサビ前辺りで景気良くバァーン! とやっていた筈。

 それがなくなってる。どこ探しても見当たらない。

 そういやクロスフェード視聴時、サビで同じ歌詞繰り返すヤツ(「ポリアンナ」の嫌いだ嫌いだ嫌いだ~みたいなの)今回少ないなーと思ったし、歌詞カードパラ読みした時もPerfume張りに多用していた「ねぇ」使ってないなと思った。「いつもの」が悉くなくなってる事に気付いた。

 

 何か……このアルバム、今までとちょっと違う?

 

 僅かな違和感を覚えたものの、とはいえタイアップだしいつもよりちょっと抑えただけなんだろうといい加減二曲目へ。

 そこで違和感が確信に変わった。

 

2.「MOIL」

 えっ!? 須田さんこんな曲も作れたんか!?

 

 初見時、あまりの衝撃にエラくおったまげた一曲。MVに出演した須田さんがモロ米津玄師だった事よりも、スタイリッシュ宅足湯inビニールプールよりも何よりも、曲から滲み出る圧倒的違和感の強さにおったまげた。

 

 今までの須田曲にはなかった、全く新しい曲調。

 編曲にトオミヨウ氏(※1)を迎え入れ、共同アレンジの様な形で制作したといういつもとは一味も二味も違った楽曲。

 ジャンルはおそらくR&B。けれどダンサブルな要素も含んでいて、若干バラードっぽさもある。ミドルテンポで進行するお洒落サウンドながら、全体構成はアニメ映画「ニノ国」タイアップに合わせてか壮大で重厚な雰囲気。サビでシンセサイザーをカッコ可愛くみょいんみょいん言わせる遊び心も取り入れつつ、相変わらず低音はしっかり。そして危うげな繊細さもあり、どこか感傷的。なにこれ、新境地切り開いてんぞ。ヤバい。

 

 最近須田さんを推し始めた新参者が言うのもアレですが、須田さんの曲ってジャンルを絞り過ぎているところが玉に瑕だと思うのです。

 無礼を承知であえて強い言い方をすれば似た様な曲が多い。ロックorバラード、「レド」系or「Cambell」系のどちらかしかない。勿論「idid」や「Dolly」や「鳥曇り」の様な変わり種も沢山あるし、被ってる風な曲もよく聴くと全然違うのですが、聴いた瞬間「あ、またこういう系か」と思う事が他のアーティストに比べて凄く多いと感じます。初めて「シックハウス」聴いた時「あれ、間違ってまたCambell流したか?」と思ったし。

 だからこそ須田景凪=あまり変化のないSSW、という死ぬほど失礼な方程式が私の中で出来上がりつつあったのですが、この「MOIL」を聴いた瞬間そんな考えが見事に崩れ去った。

 

「まーたレドだろガハハ!」とか思ってた数分前の自分をハリセンで引っ叩きたい。タカ括ってほんと申し訳ありませんでした、兄貴。

 新境地、メッチャ良いです。バリ最高っす。マジヤバくて超エモい。

  

 何と言うか、良い意味で須田景凪らしくないとこが良いんですよね。いつもと雰囲気違ってて一瞬アレッ? と思うんだけど、圧倒的な曲の良さでリスナーを魅了の坩堝に叩き落としてしまうとこ、マジで最高。

 じゃあいつもの須田らしさはどうなのかと言うとどっこいちゃんと生きてるわけでして。歌詞から漂う皮肉っぽい諦観とか、不動明王張りに安定感あるドラムとか、分かり辛くともバルーン時代から受け継がれてきた個性がしっかり根付いてる。見事だよな~。

 何でも最初に複数のデモ作って、一番「違和感」を覚えた曲がこの「MOIL」だったとか。違和感の正体これか~! てか確信犯だったんか兄貴~~!! 最高……

 

 色々御託並べといて今更アレなんだけど、細けぇ事抜きでとにかく一度は聴いてみてほしい曲です。

 一つ言えるとするなら、この曲はぜっったいに外で聴いた方が良いです。特に黄昏時。歩きでも運転でも何でも良いので外で聴く事をオススメします。

大人になった 大人になってしまったみたいだ

左様なら 違う世界に交わる 雲にでもなりたい

明日がいつか 記憶になって 些細な言葉になる前に

今、募るこの想いを あなたへと伝えたい

 雨の日の仕事帰り、濡れたアスファルトに信号機の赤と青が滲む光景を見ながらこのサビが流れた瞬間、不意に胸が締め付けられる様な感覚に襲われました。ハチの「恋人のランジェ」、有機酸の「krank」を初めて聴いた時と全く同じ感覚。心臓に直接触れられている様な、意味もなく泣き出したくなるあの息苦しさ。

 あぁ、須田さんの言う「日常に溶け込む音楽」ってこういう事かとその時初めて理解した。まさか鼻捩れるほど獣臭い牛舎前があんな都会的夜景になるとは。生涯忘れる事はないでしょう、カブトムシ。牛だけど。

 

 何気ない日常を鮮やかに彩る名曲、それが「MOIL」。超・オススメです。しかし「ニノ国」のタイアップとしてはちと微妙な気が。もっさりしたキャラデザとお洒落サウンドの食い合わせが絶望的に悪いんだな。

  

※1…シンガーソングライターだったり音楽プロデューサーだったりアレンジャーだったりする御方。あいみょんからマッキーまで様々なアーティストの編曲を手掛ける。

 

3.「語るに落ちる」

 えっ!? 須田さんこんな曲も作れたんか!?(二回目)

 

 そろそろ「Cambell」枠来るんちゃうか~? と思った矢先の劇物もとい精神安定剤投入。こりゃ一本取られたね。

 

 須田曲にはひじょ~~~に珍しいスローテンポなバラード。いつもの所謂うるさい系バラードではなく、ごくシンプルなサウンド&コード進行で織り成す滋味深い一曲。 歌い方もかなり穏やかで、歌唱と言うより朗読の趣。

 こちらも「MOIL」同様第三者との共同制作であり、アレンジに横山裕章氏(※2)が加わっています。

 

 この曲最大の特徴は何と言っても「歌詞の生々しさ」。これ一択。

 個人的に、須田さんの書く歌詞は一種悲痛なほど抒情的なところが特徴だと思っています。「veil」の感想でも書いた通り主人公の独白染みていると言うか、心の蟠りを吐き出す様な表現が多いなーと。不安定な想いを抱えた主人公が誰にともなく独り言を言ってる感じ。

 しかし「語るに落ちる」の歌詞はとても優しく柔らか。そしてとても生々しい。今までの楽曲世界だけで完結していた物語から一歩踏み出し、聴き手に直接話しかけているかの様なリアルな質感。曲中で生きる主人公ではなく、リスナーの内面により深く歩み寄った歌詞です。

それもその筈。「語るに落ちる」はラジオ番組(おそらくSCHOOL OF LOCK!)出演後、リスナーの生の声を聴いた須田さんが「彼らに音楽で何を言えるか?」と考えて制作した楽曲なのです。ある意味応援ソングなわけですね。だからこそ心に響く。

 それでもWANIMAったりファンキーモンキーベイビーズったりする只今流行中の「前向きの押し売りソング」ではなく、あくまで聴き手に寄り添うスタイルなのが非常にgood。

愛せなくても仕方ないから 下らない世界だから

大層な意味なんて見つけようとしなくていいから

ただ少しだけ 我儘でいい あなたがそう思えたら

幸福だ 皮肉だね でも願っているよ

 須田さんの人柄が滲み出る様なこの温もり。聖人かよ……釈迦如来の化身じゃん……蜘蛛の糸垂らしまくってんじゃん……未だかつてこんなにもリスナーに寄り添ってくれたミュージシャンいる……?

 地味に「下らない世界」とか「皮肉だね」とか、須田さんらしいシニカルな表現もさらっと入ってるのがニクいよね~。ここら辺「僕の曲は皆さんの為に書いてるわけではない。そこまで献身的ではない」とTalking Rock!で語っていた須田さんっぽいなーと感じます。リスナーに入れ込み過ぎない適度なクールさ、良いっすね。まさに音楽界のアフォガート

 

 あと二番サビ入ってすぐ。よーく聴くと「あぁ」って須田さんの声が聴こえるとこ、地味に最高。「全国気だるげ〈あぁ〉選手権」があれば余裕でテッペン取れるレベルのパーフェクトな「あぁ」で何度もリピートしちゃうね。何だその選手権。

 

 退屈な夜、須田さんと何でもない会話をぷつぷつ交わしている様な、そんな曲ですね。

 これ聴いて思ったけど、須田さんって何かカウンセラー向いてそうよな。確実に菩薩の心持ってんね彼は。私は今のところ上腕二頭筋辺りに出来たブツブツがクソ痒いくらいしか悩みないんだけど、そういう割とどうでもいい悩みにも親身になってアドバイスしてくれそうだよな。

「はよ皮膚科行けタコ」を幾重ものオブラートに包んで言ってくれそう。まさに音楽界の平六餅。

 

※2…サウンドディレクター。YUKI星野源など名だたるアーティストのサウンドプロデュース・楽曲提供を手掛ける。

 

4.「青嵐」

 えっ!? 須田さんこんな曲も作れたんか!?(三回目)

 

 次は「鳥曇り」系来そうやな~と思った矢先のにわかなサイレン。もう一本取られたね。

 

 静謐なグルーヴとノスタルジックなメロディが心に染み入る夏の歌。

 これも今までにはなかった新しい曲調ですね。イントロからして違うもん。憂いを帯びた電子音がゆっくりとゆっくりと広がりを見せて、からの澄み切った切ない歌声。のっけから「これは違うぞ」感マシマシで名曲の匂いしかしない。

 

 この曲は音使いの美しさも然る事ながら歌詞がとにかく綺麗。夏の美徳と言うか、日本語の持つ繊細な美しさを再認識出来る歌詞。宮沢賢治の詩を現代的にアレンジした様な趣です。

暮れの背景になって 陰るしじまをまた弔いたい

笑って 涙を濁さないで

乱反射を切り裂いて 未始終に耳を傾けて欲しくて

渡した手紙は 白紙の様な文字の羅列だけど

 この二番サビとかモロに詩。国語3の最初らへんの頁に載ってても違和感なさそう。

 

「遠くで雷が鳴った 水滴が這った」「容易く朝顔は散った 炎昼は去った」

 抽象的なのに情景がふわりと思い起こされる言葉選び、兄貴の語彙力炸裂してて凄く好き。誰の心の中にもある普遍的な夏景色とリンクする感じ良いよな~。

 

 結構試験的なアプローチの曲なので、てっきり前二曲同様第三者との共同制作かと思ったらどっこい須田さん一人で作った曲とか。たまげた。いつの間にこんな隠し玉持ってたんだ景凪兄貴。やはりporteの兄貴は一味違うぞ……!

 

 気だるい夏の昼下がり、窓の外を眺めながらぼんやり聴いてたい一曲です。

 

5.「couch

 えっ!? いつもの須田さん戻ってきた!?!?

 

 三曲連続で新境地開拓してたしラストもそういう系なんだろうな~と思ってたらどっこい舞い戻ってきたよ! 兄貴の一本背負い強過ぎてもう完敗! 敵わねえ!!

 

 もう先に言っちゃいますね。超カッケェです!! COOLな須田曲は数あれど、ここまで鮮烈で、感情的で、青臭くて、そしてどうしようもなく切ない曲はこれだけだと断言出来ます。

 朝靄の様に静かなイントロから始まったのでしっとり系かと思ったのも束の間、シャープなギターと澄んだ歌声が放つ鮮やかさにまずハッとなった。

 続いてベース&ドラムの低音安定コンビが華麗に登場。キレのあるビートでグルーヴ感を限界まで高め、サビで一気に解放。あまりにも見事な始まり。これリスナー興奮させる事しか考えてない。こんなん熱狂するしかないだろうが!!!

 

 こりゃもう最高って事しか言えねえくらい最高な曲っすね。グルーヴ感マシマシの疾走サウンド、鮮烈かつパワフルな歌声、未来への躍進を感じさせる前向きな歌詞。もう全部最高。

 中でも最高なのはやはりドラムですね。元ドラマー志望なだけあって兄貴の曲は基本ドラムが強いけど、これは本当に鰹節かってくらい良い味出しまくってる。サビ直前のバチバチバチッとかすげぇ攻撃的でありえないくらいカッコ良い。この音だけで白米五合イケそうなレベル。

 

 そして特筆すべきは須田景凪(バルーン)節の強さ。

 よく聴くとBメロに手拍子入ってたり「生まれてきた」「歩いてきた」を二回繰り返したりと、1~4曲目までひたすら隠し通してきた「いつもの」をさりげなく散りばめてるんですね。生き急ぐ様なサビに抒情的な歌詞をこれでもかと詰め込む感じもバルーンっぽい。

 

veil」で感じた違和感の伏線回収、華麗過ぎてぽかーんなるわ。音楽界のシックスセンスか。今まで散々新境地見せといて最後の最後にコレって…… 敵わない、まるで敵わない。須田景凪、あまりに強過ぎる。もう脱帽。兄貴に完敗、いや乾杯。

 

 とはいえそこはメキメキにパワーアップした景凪兄貴。コレダ感を出しつつも、楽曲自体はより洗練され広がりを持たせたモノに仕上がってます。それがよく分かるのがラストの歌詞。

僕らの願う無様な未来は 美しくあると思う

 バルーン時代~teeterまでなら「僕」と言いそうなところを「僕ら」と表現したこの部分。ベッドルームミュージシャンだったバルーンから須田景凪に転身し、二枚のアルバム制作を経て多くの人と触れ合うようになったからこそ生まれた言葉だと思います。

 

 まるで閉じた部屋に風が吹いてきたかの様。聴くだけでもう一度前を向ける歌。

 高揚の余韻を残したまま、短く長いアルバムは爽やかに幕を下ろします。

 

 

ーーーーー

 以上です。

 

 いやーこれはまた何と言うか凄いの来ちゃったねぇほんと! いつもみたいに「エモエモのエモ~~~(クソ語彙力)」だけで終わらせるには惜しいハチャメチャに魅力的な作品です!

 

 特筆すべき点はわんさとあるのですが、一番進化したと感じるのはやはり楽曲の振り幅ですね。

 特に「語るに落ちる」と「青嵐」で表現の幅がだいぶ広がったと思います。今までとは違い全体のコンセプトを決めず、あえて一曲一曲独立した形で制作したというだけあって、楽曲それぞれが全部違ったベクトルで個性的。けれどとっ散らかる事なく、キチンとまとまりのあるモノに落ち着いてるのが凄い。 

 また音使いが格段に洗練されてるのも特徴的。Quote&teeterは良くも悪くも粗削りな部分が目立っていた印象ですが、今回は極力雑多なモノを取り払い、より普遍的で大衆性を伴ったサウンドが多いと感じます。

 あとやっぱり一発聴いた時の「コレダ感」が今回は全体通して鳴りを潜めていますね。大衆向けに見えてその実かなり挑戦的な作品だと思います。

 とはいえつっとんがった部分が完全に削がれたかというと決してそんな事はなく。奇妙なギターリフや皮肉めいた歌詞など、昔から変わらぬユニークさはしっかり息付いています。同じボカロ畑出身者の米津玄師&神山羊同様、彼もまた変わらないまま変わっていくバケモンですね。あ~最高。

 

 ここから余談になりますが、実を言うと私、須田曲に対して若干苦手意識があったんですよね。

 曲自体は凄く好きなんですが、聴いてると何か無性に息苦しくなるんですよ。柄にもなくおセンチになるっていうか。バルーン時代からそうだったけれど、須田景凪として生身の人間の声で届ける様になってからその傾向がより顕著になりまして。

 無機質なボーカロイドとは一転、彼の歌声は感情を炸裂させた様な、何かをひたすらに訴え続けている様な趣でうわーっとなるんです。なにこの心臓ブン殴る声! オレじゃ受け止めきれねえ! と。聴きたいけど聴きたくない、知りたいけど知りたくない的な。こんな気分にさせてくれるのは景凪兄貴と、車検の総額費用伝えてくれる馴染みのガソスタ店員さんくらいですね。

 だからこそ兄貴の新譜聴く時は毎度毎度それなりの覚悟しなきゃなりませんでした。私の中では気軽に聴けるタイプの音楽じゃなかったんですね。

 

 ところが須田さんは「日常に溶け込む音楽を作りたい」と仰るじゃありませんか。身構えて聴いてほしくないと。うそだろ、てっきり「オレの音楽はそこらのパリピ向けとはちげーから。お前ら心して聴けよ」ってスタンスかと思ってた。リスナーボコボコにする気満々だと思ってた。須田景凪こえ~っておっかなびっくり聴いてたのに「日常に溶け込みたい」と……?

 

 またまたうそばっかで~と今まで半信半疑だったのですが、porteに触れ、「MOIL」と出会い、漸く「日常に溶け込む」の意味が分かった気がします。

 実際私の日常に兄貴の曲は欠かせないモノになってるしな。リンゴとハチミツ並みにとろ~り溶け込んでるよマジで。最近は例のスタイリッシュ宅足湯に敬意を表して足湯行く時のBGMに「MOIL」流してるよ。

 

 更なる躍進を続ける須田景凪にとって、今後重要な役割を担うであろう意欲作。

 新たな「扉」を開けた彼の音楽をもっと聴きたいと強く思った、文句なしの名盤です。

 

 

 エモエモのエモ~~~!!!結局語彙力なくすんだな。ファンをバカにさせてこそスターだからしょうがねえんだな。

 

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